と思う途端に、駕籠の先棒《さきぼう》がだしぬけに頓狂な声で、「おい、この駕籠は滅法界《めっぽうかい》に重くなったぜ」と、呶鳴った。  

外記ははっ[#「はっ」に傍点]と正気にかえった。そうして、駕籠が重くなったということを何かの意味があるように深く考えた。  今までは自分一人が乗っていた。そこへまぼろしのように女が現われて来た。駕籠が急に重くなった。眼に見えない女のたましいが何処までも自分の後を追って来るのではあるまいか。 「なんの、ばかばかしい。なんとか名を付けて重《おも》た増《ま》しでも取ろうとするのは駕籠屋の癖だ」と、外記は直ぐに思い直して笑った。  しかしそれが動機となって、彼は再び吉原が恋しくなった。駕籠屋の言うのは嘘と知りつつも、彼は無理にそれを本当にして、もしや女の身に変った事でも起った暗示《しらせ》ではあるまいかなどと自分勝手の理屈をこしらえて見たりした。そうして、自分でわざと不安の種を作って、このままには捨てて置かれないように苛々《いらいら》して見たりした。駕籠がだんだんに吉原から遠くなって行くのが、何だか心さびしいように思われてならなかった。 酒田市 不動産 - 網誌 ? yam天空部落

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